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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(あ)7号 判決

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人林頼三郎上告趣意について。

しかし、刑の量定については、事実審裁判所において、犯人の性格、年令及び境遇竝びに犯罪の情状及び犯罪後の情況を考察し、特に犯人の経歴、習慣その他の事項をも参酌して適当に決定するところに委かされている。されば、原審が被告人の経歴として、挙示の証拠に基き、本件のほかに他人の金員一万七千五百円を横領費消した外別に私文書偽造行使詐欺罪により名古屋地方裁判所において懲役十一月の判決を受けたことを本件の犯情と併せ考察して第一審の量刑を相当としたからといって、合法の手続によらない違憲のものであるということはできない。ことに、新刑事訴訟法においては、所論「有罪の判決を受くるもその確定を見ざる間は、罪なき人として目すべきものとする」従前の原則は変更せられ、苟くも第一審において有罪判決の宣告があったときは、無罪の推定は覆えり、却って有罪の推定を受くべきであること刑訴三四三條、三四四條、三四八條等の規定によって明らかである。従って、右別件が所論のごとく、控訴中で未確定であるとしても、原判決が無罪と推定さるべき事実を有罪のものとして量刑に参酌した違法があるとはいえない。それ故、論旨は、採ることができない。

よって刑訴四〇八條、四一四條、一八一條に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 岩松三郎)

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